ツクダニが部隊に入ってから少しした後の話
<シオカラ視点>
森で散々遊び回ったシオカラが、夕方やっと帰宅したら、居間のちゃぶ台にツクダニが突っ伏して寝息を立てていた。一瞬呆けたシオカラは、すぐ我に返って、なるべく音を立てないようにゆっくりとツクダニに近づく。
寝てる。
珍しいこともあるもんだ、とシオカラはのんびりと考えた。
シオカラがツクダニと出会ってから、数か月。シオカラが見てきたツクダニの姿と言えば、料理しているか、掃除してるか、洗濯してるか、あとたまに本を読んでいるところを見かけるくらいで、朝は自分より早く起きるし夜は遅くに寝るし。寝てる姿なんて一度も見たことが無かったから。
その時の事を思い浮かべようとしたけどあまりよく覚えていなかった。
何気なくツクダニの顔をのぞき込むと、ツクダニは寝ているっていう一番無防備な状態にも関わらず、親の仇にでも会ったように深く眉間にしわを寄せていた。寝てるときくらいリラックスすればいいのにね。
ここは一つ、ツクダニのおでこに肉とか落書きでもして和ませてやろうと思ったけど、どうせ大した反応返って来なさそうだからやめた。
代わりにツクダニの肩を揺すって声をかけてみる。
「ツクダニー、夕飯の時間だよー」
結構大きく揺すったというのに、ツクダニはぴくりとも反応しないで、ぐったりとちゃぶ台に突っ伏している。
あ、このままツクダニが起きなかったら夕飯は?
そうふと思ってすぐにまあいいやと諦めた。昼寝しちゃうほど疲れてるなら、無理に起こす必要はない。でも、季節的にはギリギリ冬だし、このまま暖房もかかってない部屋に寝かせておくのもあれだ。
担いでいくか
ツクダニの腕を引っ張って無理矢理顔を上げさせると、そのままこちらに向かせる。
寝ていて力のないツクダニはされるがまま、シオカラの肩に頭をもたれるようにして寄りかかった。
「おっと」
慌てて支えてバランスを取る。ツクダニは筋肉質な方だけど、見た目の割りには軽いかも知れない。これくらいなら担げるな、と気合いを入れ直して腰に手を回したとき、肩のツクダニが少し動いた気がした。
「あれ、起こしちゃった?」
そう声をかけると、ツクダニはうっすらと目を開け、寝ぼけた様子でシオカラを見ると、またゆっくりと目を閉じてシオカラの肩に顔をもたれた。
「 」
「え?」
そのまま、ツクダニはまた寝息を立て始めた。
最後に小さく誰かの名前を呟いて。
二度寝モードに入ったツクダニはさっきよりも穏やかな顔をしていた。