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英雄クロニクルや天呼でまったりプレイしている我が家の食卓(2liy)/天呼のダイス君(3745)文やらくがきをひっそりと上げる用
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2025.06.18 Wednesday
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2016.11.06 Sunday

<バケット+シミット/出会い>



オーラム共和王国。
ブリアティルトの中央に位置し各国に隣接するこの国は、交通、流通の要として交易が盛んに行われている。
神の国に繋がるといわれる『黄金の扉』を擁し、人だけではなく亜人種から魔獣、妖精まで、幅広い種の坩堝となっている。
現国王ルシルムはまだ幼いものの、立憲君主と評議会が国政を担うこの国は、他国より比較的安定した治安や経済を維持しており、
衰退しつつある王家の権力も、積極的に民と関わっていく天真爛漫な姉、アーマダ姫の人気によって保っている。
種も年齢も性別も関係ない、平等な国政が作る国は、まさに黄金の扉を守護するに相応しい、万物を受け入れる楽園。
それはキラキラと輝いて美しい。
表向きの話、だが。


「これはイズレーンの工芸、蒔絵を施した真珠の耳飾り。
 これはマッカの伝統手芸で作られたネックレス。
 こっちはセフィドの海で取れた珊瑚のブレスレット」
「わぁ、凄い綺麗!珍しい物ばっかり!
 …でもそれ、ここで売れるの?」
「ううん、さっぱり」


並べられた数々の工芸品を素通りして、子供が無邪気にかけて行った。
ここはオーラム共和王国の中心に位置する街。王宮をぐるりと囲った街は花と人々の笑顔で溢れている。
特に活気づいた市場から少し離れた場所。
子供やお年寄りの憩いになっている公園で、行商人であるバケットは一人、店を広げていた。
交易が盛んで物資には困らないこの国で、一番需要があるのは他国の民芸品やアクセサリーだと踏んで、厳選した物を持ってきたのだが、
どうやら立地が悪かったようだ。たまに通りすがりの主婦が覗きに来るものの、値段を見て帰ってしまう。

「現地の定価よりも安値なんだけどねぇ、姉姫さんも何か買ってってよ」
「あ、ごめんね。悪いけど、今日は買い物に来たんじゃないの。」

工芸品を目の前にしゃがみこむ少女に声をかけた。
金糸の髪をまとめたハンチング帽を被り直し、少女はワンピースの裾を翻して立ち上がる。
それじゃあ何で来たのと首を傾げれば、少女は懐から一枚の紙を取り出して見せた。

「バケットにちょっと見てもらいたいものがあってね」
「なにこれ、サーカス?」
「そ。一月程前から近くでテントを張ってるサーカス団のビラ」

差し出された紙は、未だパーチメントが一般的なオーラムでは珍しい、木の繊維から作られた紙だ。
鮮やかな色使いで、動物がスポットライトの中芸をしている姿が描かれている。
中々目を引く良いデザインだ。

「この前このサーカスのチケットを貰ったの。一緒に行かない?」
「えっ、連れてってくれるの?やった!僕サーカスちゃんと見るの初めて!」
「いいのいいの。…私もこのサーカス、凄い気になってたから」

少女が僅かに声のトーンを落としたのに気が付き、バケットはまた首を傾げた。
郊外にある緑豊かな広い土地。
歓迎する言葉が連なった看板を越えて森の中に入れば、サーカスに便乗して沢山の出店が並んでいる。
サーカス団は高い所場代を払い、ここを丸々貸りてサーカスを開いているらしい。
開演間近ともあって、装飾の施された紅白カラーの大きなテントの前には、老若男女多くの人が並んでいる。
皆期待に胸を膨らませ、笑顔で語り合っている。
その様子を微笑まし気に眺めながら、つられてわくわくした気分でテントの中に入った。
町の人に混じって客席に座り、まだ暗い中央の舞

ざわめき声が溢れる中、突然、テントの中が光りで満たされる。


「紳士淑女の皆々様!
 我らがサーカス団のショーにお立ち寄り頂き、誠に有難う御座います!

 さてこれから皆様にご覧に入れるのは、人が立ち寄る事の出来ない未開の地
 果ては遥か海の向こうから渡来した、世にも珍しい生き物たちが、団員とお贈りする絆の物語

 それでは間もなく開演となります。
 どうぞ現も時間も忘れ、存分に夢の世界をお楽しみ下さいませ!」


シルクハットに燕尾服を纏った、小太りで愛嬌のある男の、そんな口上で始まったサーカス。
愉快な音楽と共に、飾りつけられた生物達が、調教師であろう団員と出てきては芸をして、客を楽しませていく。
家畜である羊や豚がハードルを飛び越えて見せるのは序の口。
雄々しく現れたオルガルンが火の輪繰りをして会場を湧かし、
レイヴンが会場を跳びまわり客席に花を贈り、
二匹のコングヘッドが空中ブランコをして見せ、
愛玩動物である犬や猫が可愛らしくダンスを踊り、客を和ませる。
芸の度に拍手や笑顔が沸き起こり、団員と生物は誇らし気に幕の奥に下がっていく。

「ほえー、凄いね。開演から一か月だけど人足途絶えないのも納得だ」
「そうね、皆も喜んでるし、凄く楽しそう。表向きは」
「どういう事?」
「このサーカスは夜も公演してるの。ここじゃないどこかで、こっそりとね」

煌びやかな舞台を眺めながら、苦々し気に眉間に皺を寄せる少女。

「昼間の舞台には出て来ない、もっと珍しい生物を…
 危険種に指定されている飼育しちゃいけないモンスターとか 亜人、とか」
「亜人の団員もいるってこと?」
「亜人を見世物にしてるの、動物としてね」

緩く首を振る少女に、バケットはへぇ、と小さく呟いた。
ブリアティルトでは人間以外の知能を持った生物が多く存在する。
二足歩行で服や道具を使うものを、人間に近い者、亜人と呼び、言葉を話す獣は魔獣と呼ばれる。
亜人の多くは知能に加え人間を遥かに凌ぐ身体能力を持っている為、戦禍の中で活躍する。
稀人の中でその認識は薄いが、ブリアティルトで生まれ、暮らす人達にとって
亜人は未だ「モンスター」扱い、畏怖の対象だ。

「この国もそう。異種同士が共存する差別のない国、そんなの上っ面だけ。
 それを謳ってる評議会の連中もそうよ。
 見た目だけで判断して、どこかでは腫れ物のように扱ってる。
 奴隷や人身売買は禁止されてるけど、やっぱり亜人への規制は甘い。」

無愛想だが、よく自分の面倒を見てくれる鎧の竜人の事。
大きくなったら口説きに行くと、いつも軽口を叩いて来る面白い獣人の事を、少女はよく知っている。
その二人が苦労して、今の地位を築き上げた事も。
アイオライトのような鮮やかな瞳いっぱいに溜まった涙を、乱暴に拭う。

「その夜の公演には悪趣味な貴族達が呼ばれるらしいの。でも規制が甘いだけに、大っぴらに兵士を動かして調査も出来ない。
 …それに、議会の連中の中にも客がいるって噂もある。だからバケットに調査してほしいの。」

歓声の波に紛れて、凛とした少女の声がはっきりとバケットの耳に届く。

「公的な仕事じゃないからそんな高い報酬は出せないけど、私のお小遣いから出すから。…お願い」
「姉姫様のそういうところ、好きだよ」
「…な、何?急に」

笑うバケットに、困惑する少女。
少女の愛らしい目から険しさが若干ほぐれたのを見て、バケットは目を細めた。

「お受けしましょう!まだ見た事ない不思議な子達も、見てみたいしねっ」

――だから心配しないで、アーマダ姫。
舞台はまさに最高潮の盛り上がり。一斉に席を立ち拍手や指笛を慣らす観客に混じって大袈裟に立ちあがると、
演技かかった動作で大きく手を広げ、満面の笑みを見せた。
二人の会話は歓声の波に消えた。

 


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