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英雄クロニクルや天呼でまったりプレイしている我が家の食卓(2liy)/天呼のダイス君(3745)文やらくがきをひっそりと上げる用
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2016.06.06 Monday
2.

 
少し長いもの

 <シオカラ視点>




私は一応戦う事を仕事にしている。

勿論遠征で怪我だってするし、探索で死にかけた事だって、人が死ぬとこだって見た事ある。

自分の怪我はもちろん、ツクダニやソルトさんや、仲間が怪我した時だって何とも思わなかったのに。

 

ツクダニがドラゴンにやられそうになったあの時。

 

自分の内臓が抉られるような気持ち悪い感じがした。あんな感覚初めてだ。

 

無事家についてから一週間、私達はこの世界にある「魔法の力」でほぼ全快していた。

一番重傷だったツクダニも、発熱で数日間寝込んだものの今は収まり、取れかけていた腕も一応動かせるようになっていた。

魔法って便利だね。力が強ければ怪我だって一瞬で治るし、蘇生だって出来るし。これもカナデさんが各方面に頼み込んでくれたおかげだ。

これくらいの怪我戦時中じゃ珍しい事でもないし、いつもなら治ってからまたリベンジすればいいや。で済んだのだけど。

 

あの日からツクダニの様子がおかしくなった。

ソルトさんの話だと、ツクダニはここ数日ろくに寝ていないらしい。やっと寝付いても、すぐに魘されて起きてしまうのだと。

思えばご飯もあまり食べていない。

私達の前ではいつものように振る舞っていても、壊れかけているのは明らかだった。

 

数日ぶりにツクダニが寝付いたのを確認すると、私とソルトさんは居間で静かに話を始めた。

 

 

「…会った時と同じだなぁ」

 

ツクダニの近況を聞いた後、ぽつりと一人言をこぼした。

ご飯を食べようとせず、眠りにもつかず、今にも増して無口だったあの頃のツクダニを思い出す。壁に寄りかかって俯いていたソルトさんが、沈んだ様子で視線だけをこちらに向けた。

 

「原因はなんでしょう?」

「んー、やっぱあの枷かなー」

 

ツクダニの左腕と一緒に砕かれた鉄枷。あれはツクダニがこの世界に来る前からつけている物だった。

いつも肌身離さずつけているから余程大事な物なのか、もしくはそういう趣味なのかくらいに思って、つけている理由も聞いたことなかったけど。

 

私は少しだけ、ツクダニが寝ているだろう部屋のドアを見た。

下ろしていた腰を上げ、壁に立てかけてあった小振りの斧を手に取る。

 

「シオカラさん、どこに行くんですか?」

 

玄関に向かおうとしたところで、ソルトさんに腕を掴まれてしまった。

 

「ちょっと散歩に」

「嘘つけ。待ちなさい。勢いだけで行動して、またやられる気ですか?」

 

真剣な声でそう諭され、私は少し考えてから腕の力を抜いた。

落とした視線をあげると、らしくもなく真っ直ぐに私を見つめる翡翠の瞳があった。ああ、これはあれだ。

『怪我をするな』

いつだかツクダニに言われた言葉を思い出して、ソルトさんと重ねた。

 

「…ごめん、ついて来れないっていうなら抜けていいよ」

「シオカラさん」

「でも、このまま引き下がるのは気が済まない」

 

確かに、他の人に鉄枷の欠片や、置いてきてしまった小松菜の回収を頼む方が確実だろう。

ドラゴンだって強い人に任せちゃえばいい。遠征の時だって、自分の手に余る人はそうしてきた。

でも今回は訳が違う。何が違うのかはわからないけど

 

「…勝てると思いますか?」

「私は、私達なら倒せると思ったから行ったんだ。今度は絶対倒す」

「…、……わかりました。サポートします」

 

翡翠の目を見返してそう言えば、ソルトさんは暫くして、諦めたように溜息をついた。

いつものように朗らかに微笑んで、私の肩にそっと手を置く。

 

「今度は冷静な指揮、お願いしますね。」

 

頼りにしています、隊長。と

嫌味でも脅しでもなく、ただ力強い声で言われた。

肩に重くのしかかるようなその言葉は、割と心地が良かった。

 

 

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