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英雄クロニクルや天呼でまったりプレイしている我が家の食卓(2liy)/天呼のダイス君(3745)文やらくがきをひっそりと上げる用
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2016.06.06 Monday
5.

 

やや長いもの

<シオカラ視点> 




動かしていた足を止め、薄暗い中目を凝らしてあたりを見渡す。

多分ここらへんにあると思うんだけど、目につくのは錆びれた剣やら防具ばかりで小松菜らしいものは見当たらなかった。というか圧倒的な剣の多さだ。

 

「くっそ、どうせだったらもっと目立つ特徴つけとくんだったなぁ…刃が光るとか」

 

小松菜の名前の由来になった先が光ると言われた伝説の槍、「松明」を思い出す。いやでも、私魔法とか使えないから光らせられないし…蛍光塗料を塗る案も考えたけど刃が錆びそうだったから止めたんだった。

一人でぶつぶつ呟きながら小松菜を探していると、岩の影で何かが反射した。

気にかかるものがあり、慌てて光が見えた方へ駆け寄る。

洞窟の隅で何気なく転がっていた岩の影に、小松菜が突き刺さっていた。あの時の一戦でここまで吹っ飛ばされて来たらしい。

 

 

「ああっ小松菜!お前こんなところに…!」

 

 

これでアイツを倒せる!一週間ぶりの小松菜に涙ぐみながら手を伸ばす。

その時だ。

私と小松菜の再会を邪魔するように洞窟内に轟音が響き渡った。

そのまま私に武器を取らせまいと、引き剥がすように巨大なつらら石が私の頭上目がけて落ちてくる。

ドラゴンめ、こんなので私を止められるとでも?

 

いらつきながら口を歪め、手元の斧に力を込めて降ってきた岩を勢いよくかち割った。

砕けた岩が飛び散り辺りに砂埃を巻き上げる。

 

 

「シオカラさん!」

 

 

ソルトさんの声を聞いて、はっと我に返る。

砕けた岩の影に隠れて、ドラゴンがすぐそこまで迫っていた。

 

「うっわ!」

 

突然現れたドラゴンに驚き転がるように避けると、狙ったかのようにドラゴンの爪がランプを掠めた。手元から離れたランプが地面に落ちて割れ、辺りが暗闇に包まれる。

 

遠くから風の音がする。

多分ドラゴンはまだこっちを狙っているんだ。落ち着け

静かに目を閉じて、深く、静かに息をする。水の音、足音に混じってドラゴンの荒々しい呼吸がこちらに迫っているのを感じた。風が巻き起こりドラゴンが大きく吠えた。

 

(今だ!!)

 

ドラゴンの歯が間近まで迫るのを感じて、私は斧を握る手に力を込めた。目の前に差し出すように構えると、金属音と同時に腕に重さがのしかかる。

 

「うぁっ!」

 

しかし、小振りな斧ではドラゴンの咀嚼力には耐えきれなかったようだ。首を軽く振るわれただけで鉄が脆くも砕け、私はその勢いで地面に転がされた。

起き上がる暇もなく、身体にドラゴンの足が圧し掛かり骨がみしみしと悲鳴をあげた。

辺りは暗闇、手元には武器もない。ああ、やばいなあこれ。またか。

暗闇に大分慣れてきた目でドラゴンを見上げる。圧倒的な力で弱者を嘲笑っているような雰囲気がした。

 

「……下位種とはいえ、やっぱりドラゴンか」

 

ドラゴンの歯が迫る。

ドラゴンを睨みつける私の目に眩い閃光が走った。

 

突然の光に目の前が真っ白になり思わず目を瞑る。さっきの光に目をやられたらしい。ドラゴンが高く吠えて、私の上から退いた。

えっ何が起こったの

 

「シオカラ!」

 

目も明かないまま地面に転がって混乱していると、聞きなれた声に名前を呼ばれた。

そのまま、腕を引かれ強引に立たされると引きずられるように走り出す。

 

「…ツクダニ?」

 

無理矢理眩む目をこじ開けると、顔は見えないが今家で寝てるはずのツクダニがいた。

なんで?

返事のないまま走らされていると、ふと地面がぐにゃりと歪んだ感じがした。これは、ソルトさんの立ち位置入れ替えだ。ドラゴンの元を離れたみたい。

 

「こっちです」

 

小声気味でソルトさんに案内され、私達は一旦洞窟内の岩陰に身をひそめた。

ツクダニが持ってきたランプの光を落としてドラゴンの様子を伺う。ドラゴンは、先ほどの閃光…ツクダニの攻撃で目をつぶされたようだ。怒った様子で小松菜があるあたりをのしのしと歩き回っている。

とりあえずは一息つけそう。ツクダニは静かに溜息をつくと、掴んでいた私の手を乱暴に離してその場に腰かけた。

 

「ツクダニ、なんでここに?」

 

俯いているツクダニに静かに話しかける。

走ってきたのか。ツクダニは乱れた息を整えると、こちらを見ないまま、重苦しい雰囲気で口を開いた。

 

「それはこっちの台詞だ。なんでこんなところにいるんだ」

 

いつもとは違う、とげとげしい声でそう言われて少し肩が揺れた。

ゆっくりとこちらを見上げるツクダニ。晴れたときの空のようなツクダニの目は、暗い中で見えるとくすんでみえた。

 

「この前やられたのもう忘れたのか?そんなに死にたいのか、お前は」

 

普段から私を叱らない、どんなに自分がボロボロになっても反対意見も出さないツクダニが、珍しく口調を荒げている。

睨まれ、一気に捲し立てられ、私は言葉につまった。

いつもとは違うツクダニを面白がっているような、怖いと思っているような

 

言葉を返さない私に、ツクダニは溜息をついて無言のままソルトさんに視線を向けた。

ツクダニの視線に肩をすくめて見せるソルトさん。何アイコンタクト取ってるんだろう。

暫く俯いてから、ツクダニがまた私を見た。

今度は悲しそうな目だった。

 

「…俺のせいか」

「ッ…!」

 

咄嗟に、何か話そうと口を開けたが、言葉が思い浮かばなかった。

暫く沈黙があたりを支配する。

なんでここに来た、って言われても私もわからない。本当はドラゴンにリベンジするためでも、依頼を達成するためでも、小松菜を拾いに来た訳でもなかった。

何を言えばいいのかわからないまま、私はぽろりと言葉を零した。

 

 

 

「ツクダニが、私なんか庇ってやられるからでしょ…っ」

 

 

 

絞り出すような私の声に、ツクダニが目を見開いた。

辺りに変な沈黙が流れる。少し声を荒げたことで、ソルトさんがマイペースに向こうのドラゴンの様子を伺っている。

頭に上りかけた血が下りてくると、なんだか気まずくなってツクダニから視線を逸らした。

 

 

「あー、……ていうか、よく一人で此処まで来れたね」

「……… まったくだ」

 

 

私の下手な話題の逸らし方に、ツクダニが小さく笑った。重苦しかった空気が軽くなる。

それはもう殺伐としたダンジョンでもない、いつもの我が家の食卓の緩い空気だった。

…ああ、落ち着く。

 

「シオカラ」

 

ツクダニがしっかりとした声で、名前を呼んだ。

 

 

「アイツを倒そう」

「…おう!」

 

 

そう言ったツクダニの目は、いつも通り。晴れ晴れとした空の色をしていた。

かくしてドラゴンへのリベンジ作戦は幕を開けた。

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